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TOPサロン講座「時空を超えたみどりの旅〜植物景観から考える青葉山丘陵〜」を開催しました。

サロン講座

「時空を超えたみどりの旅〜植物景観から考える青葉山丘陵〜」を開催しました。

投稿日:2025年03月19日(水)

このイベントは終了しました。

たまきさんサロンスタッフです。
2月22日(土)に自然再生士・森林インストラクターの江刺拓司(えさし たくじ)氏を講師にお迎えして、「時空を超えたみどりの旅〜植物景観から考える青葉山丘陵〜」と題したサロン講座を開催しました。


自然再生士や森林インストラクターの資格を持つ講師の江刺さんは、石巻市北上町にて震災による津波被災集落跡地の森林再生プロジェクト「平地の杜プロジェクト」に従事されています。
元々は青葉区花壇のご出身で、青葉山キャンパスの東北大学工学部建築学科に学ばれ、青葉山・八木山周辺の自然を熟知されている方です。
今回の講座では、青葉山に焦点を当てて、植物がつくり出す景観から青葉山丘陵のこれまでの移り変わりとこれからの変化について教えていただきました。



【植物がつくり出す景観】
植生:その時点までの環境に対応して成立した植物種構成
植物景観:植生やその集まりに対して人間が視覚的に得た眺め


植物景観を語る上で重要なキーワード

植生は時間の推移とともに遷移していき、やがてその地域の環境に適合した状態になり安定します(極相に達する、というそうです)。植物景観は、この遷移という時間をかけた植生の変化が見せてくれる景色と言えます。

【過去への旅】
青葉山丘陵の変化について、古い地質年代から現在に至るまでの主な出来事を年表で紹介していただきました。

『青葉山丘陵タイムワープ・ターゲット』江刺氏作成より一部抜粋
縄文時代早期(8000年前) 集落の存在
1645 (正保2年)(380年前)奥州仙台絵図、「青葉山」の初出
1945 (昭和20年)(80年前)第二次世界大戦終戦。一帯を米軍が接収
1957 (昭和32年)(68年前) 在日米軍から返還→国有地→県有地
1960 (昭和35年)(63年前) 仙台カントリー倶楽部青葉コース開業
2017 (平成29年)(8年前)東北大学新青葉山キャンパス竣工

太古の地質時代(約500万年前の竜の口が海だった頃)から、旧石器時代(2万年前の最後の氷期)までには、気候や地形の変動などに伴って、青葉山の植生も大きく変化しました。
例えば、暖かい時代の植生だったメタセコイヤやセコイヤが火砕流で埋まり、亜炭の原料になりました。その亜炭は、戦時下には燃料として採掘、利用されたという歴史があります。
古い時代の植生は、地層や堆積物に含まれる植物化石(植物体、葉、果実、花粉)や亜炭(珪化木、埋れ木)などから推測することができます。また、江戸時代に描かれた絵図面、近年では航空写真やスナップ写真、民有林・国有林の情報システム、地図アプリ、GIS(地理情報システム)、最近ではドローンを使った動画映像などによって、青葉山周辺の植生も人の利用の仕方の移り変わりと共に大きく「遷移」してきたことがわかります。

東北大学新キャンパスが造られた場所も、明治から令和までの約160年の間にも大きな変化を見せています。
宮城県平野部の丘陵地の特徴としては、暖温帯常緑広葉樹林帯と冷温帯落葉広葉樹林帯との推移帯にあたる中間温帯林になっていて、人の手が加わらなければいずれ「モミ―イヌブナ林」として極相に達して安定するとされています。





1602年 (慶長7年)に開城した仙台城の裏手に広がる御裏林(おうらばやし)は、防御施設としても厳重に管理され手付かずの森林が維持されました。また、城の背後の丘陵全域の御城林(おしろばやし)は、用材、薪炭、狩猟・採集地として負荷の小さい里山的な利用がなされ、自然度が比較的高い自然林として維持管理されていたと思われます。
現在の宮城県平野部では、極相にまで達してなお現存している森は少ないというお話でした。

【これからの青葉山丘陵】
これから先の青葉山では、都市計画道路などの大規模開発計画や、大学所有地の開発利用計画などが構想されていますが、環境の保全と土地の開発利用には、バランスのとれた柔軟な対応が必要と思われます。
森林経営の面から見ると、国有林・市有林は、環境配慮型の経営が期待されるので、自然災害(台風、地震災害等)や環境変化(病害虫によるもの等)に対応しながら、今後も保全されていくと考えられ、景観に大きく影響することはないと考えられます。
現在加速しつつある気候の変化は、今後の青葉山にとっても大きな影響を及ぼすことは必至です。急速な温暖化は、暖地系植物の進出を加速させ、それに伴って新たな樹病や害虫の問題も発生すると考えられます。また、有史以前から繰り返されて来たように、気候の長期的変化による植生の遷移と、それに伴った植物景観の大きな変化は、今後も続いていくと予想されます。

いずれにしても、まず大切なことは「知ること、親しむこと、気づくこと」であると、江刺さんは強調されています。
今回の講座は、その小さな一つの試みです。
青葉山の歴史や特徴を時空を超えて知り、この豊かな自然に積極的に親しみ、様々な素晴らしさや問題点に気づいていく姿勢こそが、これからの青葉山のより良い発展につながっていくのだと教えられました。

【自然再生や都市の再野生化】


各地で利用放棄地(耕作放棄地、開発跡地、大規模災害の跡地など)の問題がクローズアップされて来ています。
植生の視点から見れば、まさに遷移の真只中にあるとも言えますが、そのまま荒地としておくだけでよいというわけでもありません。
2050年には世界人口の70%が都市部に住むとも言われているだけに、再開発の繰り返しではなく自然本来の生成力を活かした都市における新たな生態系の構築が求められています。これが、最近使われるようになってきた「再野生化」というキーワードです。
都市の再野生化とは、具体的には生態系が持っている様々な機能を活用することで、気候変動に対する耐性強化や環境汚染の減少、豪雨や乾燥、ヒートアイランド現象などの都市災害の軽減や、生物多様性の回復環境の整備、植物景観も含めた快適で住みやすい都市環境の創造、さらには食糧の生産にまで至るアイデアです。

NYマンハッタンの高架鉄道跡地を緑地帯として再開発した「ハイライン」を、先進的な取り組みの事例として紹介していただきました。
また、講師の江刺さんが取り組んでおられる津波被災集落跡地の森林再生のプロジェクトである「平地の杜プロジェクト」の活動についても紹介していただきました。

【フィールド観察】
座学の後で、青葉山新キャンパスを散策して植生遷移の現場を観察してみました。
この時期は、常緑の針葉樹の植生がよくわかります。
新キャンパスの丘陵を少し登ると、竜ノ口沢の支流の一つの源流部があります。標高は海抜約170m位です。


まだ寒い二月下旬の新キャンパスを歩きます。


今回散策したのは写真中央部分の舗道が整備されたコースです。
右手(南側)の丘陵には、2025年(令和7年)に高輝度放射光施設「ナノテラス」が竣工しました。



刈り払い後5年位のアカマツの幼木が見られます。


この下は竜ノ口沢の支流部の谷になっていて、モミと落葉広葉樹の植生が観察できます。周囲は動物避けの電気柵で囲われています。

青葉山新キャンパスは、軍用地やゴルフ場跡地という歴史も経て来ているためかなり伐採が行われ、現在は先駆植物と呼ばれる低木の植物が多く、植生遷移としてはまだ若い状態にあると言えます。開発以前からの植生やキャンパス造成時に他から移植された樹木も混在しています。

青葉山の自然に配慮した環境調和型キャンパス計画のもと、青葉山新キャンパスが竣工して8年。多くの建築物が建ってキャンパス景観も目に見えて変化しつつありますが、長い時間をかけて遷移していく植物景観にも視点をおいて、今後の青葉山丘陵を見ていきたいと強く感じました。

講師の江刺拓司さん、講座にご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。



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