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TOPサロン講座「レインガーデン(雨庭)を探る!」を開催しました

サロン講座

「レインガーデン(雨庭)を探る!」を開催しました

投稿日:2024年07月12日(金)

このイベントは終了しました。

たまきさんサロンスタッフです。
6月15日(土)に、東北大学施設部キャンパスデザイン室専門職員 内山隆弘 (うちやま たかひろ)氏を講師にお迎えして、「レインガーデン(雨庭)を探る!」と題したサロン講座を開催しました。

レインガーデン(雨庭)とは、雨水を排水に直接放流せず、一時的に貯留しながらゆっくりと地中に浸透させる人工的な庭や貯水構造物のことです。排水の負荷を軽減するのが目的で造られたものですが、見た目にも美しいグリーンインフラにもなっています。
今回の講座では、青葉山・川内エリアに設置されたレインガーデンの実物を見学しながら、その仕組みや重要性について学びました。

【グリーンインフラ】
豪雨で冠水した道路、側溝から溢れた雨水、河川の氾濫・・・少なからずそんな光景を目にしたことがあるはずです。これは、降雨量に対して排水が追いついていない状況の現れです。
その対策の一つである「レインガーデン(雨庭)」について、専門家から教えていただきました。

雨水処理の従来の考え方は、コンクリート製の管で雨水を集め速やかに敷地外へ排出するいわゆる「グレーインフラ」でしたが、それに対して、土地や植物の能力を利用して雨水を敷地内で分散的に処理する「グリーンインフラ」という新たな考え方が提唱されるようになってきています。
グリーンインフラとは、自然環境が有する多様な機能をインフラ整備に活用していこうという考え方や取り組みを指しており、今回注目した「レインガーデン(雨庭)」はその具体例の一つです。

「レインガーデン(雨庭)」は、1990年頃に米国メリーランド州などにおいて下水負荷軽減の治水対策として生み出されました。その効果としては、自然が人間に与える恩恵(生態系サービス)を構成する4つのサービスとの関連から、次のようなことが挙げられます。
・供給サービス:降った雨を地面に浸透させ、地下水の涵養(かんよう)に利用する。
・調整サービス:下水道システムへの負荷を軽減し、洪水の調整を行う。土地の乾湿を安定させ気候の調整を行う。
・文化的サービス:有機的・機能的な景観を創造し、緑による憩いの場を提供する。
・基盤サービス:水循環を健全化させ上記3つのサービスの基盤となる。
レインガーデンが生み出す効果はこのように多面的なものです。一つ一つはささやかな構造物ですが、これらが多数整備されることによって、都市の水循環が理想的なバランスを持って改善されることが期待されています。雨水配慮型の街づくりにとって、レインガーデンは有効な手段であると考えられます。

【杜の都における歴史的雨水処理システム】
仙台市は、江戸時代からすでに雨水マネジメントが行われてきた城下町と言えます。
・「四ツ谷用水」という河岸段丘の地形を巧みに利用した水供給システムは、雨水排水路としても機能して、地下水の涵養も助け城下の屋敷林を豊かにしました。現在の杜の都をつくった大きな成因の一つとなっています。
・仙台城は広瀬川を外堀とすると、青葉山から流れる複数の沢筋を堰き止め
ることで内堀をつくっていました。二の丸の北裏を流れる千貫沢(せんかん
ざわ)には御裏池(おうらいけ)、本丸の西側の御裏林から流れる沢には中
島池から五色沼、長沼という多くのため池が造られていました。
青葉山の御裏林に降った雨水や地下水を利用して、防御策としての堀を養
い、堀から地下の砂礫層に浸透した水は井戸水として生活用水に使用し、堀自体も流下方向に沿って連鎖する遊水池として洪水調整の役割を果たすという、多面的な機能を持たせた造成が行われていました。

以上のことを踏まえて、実際に現地を歩いて雨庭を探ってみました!
仙台市地下鉄川内駅前に集合して、東北大学川内キャンパスに入ります。

【川内モール】

かつては、広くアスファルト舗装されていたキャンパス内の地面でしたが、舗装を剥がして芝や樹木を植栽することで透水エリアを拡大しています。
最近更新が行われた擁壁の裏込め石として使われていた玉石をそのまま再利用して、透水エリアが造られています。城の石垣にも使われている三滝玄武岩と考えられる旧擁壁の石材も縁石やベンチなどの外構デザイン要素として再利用されています。

【川内北レインガーデン】

課外活動施設前の広場の雨水を三ヶ所の植栽桝で受け止めています。
植栽桝にはヤマボウシ、トクサ、イグサなど水を好む植物が植えられています。この桝からオーバーフローした雨水は、浅い皿型の側溝を流れ下流の桝へ、最終的には千貫沢に流れ落ちます。

ここに植えられているミズキ科のヤマボウシの木を見ると、同じ時期に植栽したのに、同じ大きさの桝の中でも生長に差が出ていることがわかります。これは、どうしてなのでしょうか?

このような連鎖しているレインガーデンの場合、水の流れから見れば上流部と下流部では養分や水分の吸収度合いが違ってきているせいなのかもしれません。

【千貫橋と御裏池】

二の丸の北側の沢は、かつては堤「千貫橋」によってせき止められ、上流に「御裏池」と呼ばれた堀を形成しました。堀の水は、この「千貫橋水落石垣」から千貫沢へと流れ落ちます。この流れは、現在の萩ホールの裏から国際センター駅広場の下を通り、広瀬川に至ります。


【川内南レインガーデン】

駐輪場の雨水が集まります。トクサ、ギボウシが植えられています。

この植栽桝からオーバーフローした雨水は、浅い皿型の側溝を流れ下流の桝へと段階的に流れるように造られています。

【講義】

見学の途中、大学の会議室をお借りして、レインガーデンについての座学での講義も行われました。

【中島池〜五色沼〜長沼】

大手門の上方にあった中島池は、戦後に埋め立てられましたが、いまだに地下暗渠を水が流れています。この水は、御裏林の沢や湧水「御清水」からの流水で、五色沼を経て長沼に流れ、最終的には広瀬川に放出されます。城郭防御としての内掘の機能だけではなく、雨水調整池としての機能も果たしていました。


【青葉山公園 仙臺緑彩館】

かつて片倉小十郎景綱の屋敷のあった場所に、2023年に造られた施設です。緑彩館の雨水計画は、屋根に降った雨水を雨樋や雨水管ではなく、「枯山水(かれさんすい)」という我が国の伝統的な造園技術を模した庭園で直接受けるという構造になっています。景観的にも美しい日本庭園の趣が感じられる造りでもあります。


【仙臺緑彩館 もりの庭園】

建物の南側にある「もりの庭園」は、庭園全体がレインガーデンとなっており、緑彩館の屋根に降った雨水はこの庭園に導水されます。この庭園は青葉山の地形や植生などを参考に設計されています。
講師の内山さんたちや市民も参加した雨庭づくりワークショップが行われるなど、緑彩館の「もりの庭園」はレインガーデンとしてまだまだ進化発展を続けています!

【仙臺緑彩館 駐車場】

駐車場まわりの浅い空堀のような「バイオスウェイル」
スウェイルとは、窪地のことです。駐車場に降った雨水は、この窪地に流れ込み一時貯留、地下浸透されます。植栽も施され浸透性も考慮されているので、これも非常に有効なレインガーデンと言えます。

【おまけ】

2023年7月20日 降雨時に撮影 レインガーデン内の通路の石が完全に水没しています!

2時間半に渡って歩いて学ぶ講座でしたが、初めて知ることの多いとても興味深い内容で、参加者の皆さんも熱心に聴講見学されていました。
年々降水量が増え、集中豪雨も増えて来ています。杜の都と呼ばれる仙台市に暮らす私たちは、先人の工夫からも学び直して、自然環境に配慮したより快適な都市づくりを進めていく必要があると、改めて感じました。
講師の内山さん、ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。


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