「環境調査というお仕事〜クマの生態を探る〜」を開催しました。
投稿日:2024年02月23日(金)
たまきさんサロンスタッフです。
2月10日(土)に株式会社地域環境計画 野生生物管理部副部長 小野 晋(おの すすむ)氏を講師にお迎えして、「環境調査というお仕事〜クマの生態を探る〜」と題したサロン講座を開催しました。
クマの市街地への出没や人との事故のニュースが多く報道され、社会的な関心が高まっています。そこで、主にクマをめぐる自然環境調査を行っている民間企業の専門家から、クマはどのような生態の動物で、それを知るために実際にどのような興味深い調査が行われているのかを教えていただきました。
生態学とは、生き物が生きる上で、それらを取り巻く環境との関わりを扱う科学のことです。この生態学に基づいて、自然環境調査(以下「生態調査」と表記)が行われています。
今回の講座では、クマ(ツキノワグマ)に焦点を当てて、その生態と調査について教えていただきました。
ツキノワグマは、生態学的に次のように位置付けられます。
・本州で最大の陸上哺乳類である。(体長110cm〜150cm 体重50kg〜120kg)
・アンブレラ種である。(生態ピラミッドの最高位に位置する。十分な食べ物を得るために広い生息地を必要とする)
・種子散布者である。(サクラやミズキなどの木の果実は、種がそのまま糞として広い範囲に排出散布される)
このように、調査対象となる動物と、それらが棲息する自然環境や他の生物との関係性をひも解くのが「生態学」です。そして、それを調査するのが「生態調査」です。
主な調査の方法は、次の通りです。
・痕跡を探す(足跡、糞、爪痕、クマ棚など)
・自動撮影カメラを使う
・GPS発信機をつけ、追跡する
・目撃情報、被害情報などを集める
このような調査によって、「どのような環境が好きか」「何をどのくらい食べているのか」「どれくらいの範囲を動いているのか」「何頭くらいいるのか」「どこの山地や農地、市街地まで出没しているのか」などがわかるそうです。
とは言え、ひたすら現場を歩いての調査が基本なので、体力と気力が必要とされる大変な仕事です。
クマよけスプレー、クマ鈴、熱感知センサーカメラ、発信機、受信機、アンテナなど。
ハチミツで誘引し捕獲したクマは、性別や年齢、体長などを記録したうえでGPS発信機(首輪)を装着して、行動圏の調査を行います。
それを元に地図にマッピングし、出没の目撃情報なども合わせて、被害対策などに役立てられています。
クマの場合は、季節によってその生態が変化します。
冬眠期を終えた春から初夏にかけては、若葉や山菜を食べ、繁殖期の夏は昆虫や果実、冬眠に向けての飽食期の秋は、木の実を大量に食べます。
このようなクマの生態は、春の山菜採りでの遭遇事故、夏の畑地などの農産物被害、秋の山の、木の実の凶作による里山出没など、人との間に問題が生じる要因にもなっています。
日本のような山や森林が多く狭い国土の中で、人と野生動物が互いを侵害せずに共生していくことはとても難しいことです。
行動範囲や好む環境を調べることが、共生のための有効なヒントにつながっていくかもしれません。
専門家による地道な生態調査の積み重ねによって、私たちを取り巻く自然環境の実態が調査され数値化されているということを知りました。生態調査というお仕事の重要性がよくわかりました。
今身近になっている「クマ」という大型哺乳類の生態を通して、生態系の保全や自然環境保護を考える良い機会になったと思います。
今回参加された皆さんからも、講師に多くの質問が投げかけられて、関心の高さが感じられました。
講師の小野さん、ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。
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