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TOPサロン講座「手製本を学ぶ −絵本を仕立ててみよう!−」【サロン講座】 

サロン講座

「手製本を学ぶ −絵本を仕立ててみよう!−」【サロン講座】 

投稿日:2020年12月20日(日)

このイベントは終了しました。

たまきさんサロンスタッフです。
12月6日(日)に、『手製本を学ぶ -絵本を仕立ててみよう!-』と題したサロン講座を開催しました。
講師には、和綴じ製本作家の永澤 裕子(ながさわ ゆうこ)さんをお迎えしました。

永澤先生は、仙台市内をはじめとした近隣の文化施設において、本の修理や、和綴じの技術を多くの方に知ってもらうための講座・講習会を数多く開催し活動されています。

先生の講座では、毎回参加者自身が実際に製本の実習をしながら和製本の技術を教えていただいています。
 


今回の講座では、副題にある通り「絵本」の仕立て方を学びます。

まず絵本を思い浮かべてみてください。読み本と違って、少ない頁をめくって、描かれている絵を見るという時間が主になります。そのために、頁が開かれた形で保持できることや、少し厚手の紙を使って丈夫な作りになっているといったイメージが強いと思います。
 

本来、絵本となるべき「絵」が必要なのですが、今回はお気に入りの絵や写真を使って絵本のように製本してみようということになりました。

手製本の技術を学ぶことが目的なので、どんなものでもよいのですが、紙の厚さや枚数を考えると、絵や写真入りの「月めくりカレンダー」が適しているようです。

参加者の皆さんには、カレンダーに使われていて、捨てずに残してある12枚の絵や写真をご持参いただきました。
 

早速、作業開始です。
今回は、「足継ぎ(あしつぎ)」という技法を使って、絵本に仕立ててみます。

材料は、製本道具の他に以下の物を用意します。
・12枚の絵(縦350mm×横450mm以内)。
・足継ぎ用の和紙(幅50mm×天〜地の長さ+10mm)を3枚。
・裏打ち寒冷紗(うらうちかんれいしゃ)。
・ワックス紙。
・表紙用の紙(天〜地の長さ×小口〜背の長さ+中身の厚さ+30mm)黒色マーメード紙。
・中身を綴じるための製本用麻糸。
 
 

作業に入る前に、まず先生からカッターナイフの正しい使い方を教えていただきました。

「刃は立てないで寝かせて使う」ことが、紙や布をきれいに「断つ」コツです。

それから、刃を新しい刃に小まめに替えることも重要です。惜しまず刃を新しく替えて使っていくことが美しい仕上がりにつながります。

紙にステンレス定規を当てて、カッターナイフを入れていくだけの作業なのですが、こつは片方の手で定規をしっかりと押さえ固定することです。


一回で切り離せない時には、何度か刃を走らせるようにしてみましょう。
 

そして、「糊(のり)」の扱いも重要です。

先生は「糊は塗るのではなく、引く」と指導されます。
特に和紙を使った貼り合わせでは、糊はしっかりと薄く引き、はみだした糊は必ずぬぐっておくことがポイントです。
このようにすることで、接着し乾いた後で、美しい仕上がりになります。

糊は「木工ボンド」に「でんぷん糊」を少し混ぜたものが、作業上使い勝手が良いようです。

和製本の基本で、特に重要なことは「紙を折る」「紙を断つ」「糊を引く」の三点です。

本の上下左右裏表には、それぞれ名前が付けられています。

例えば「背(せ)」ですが、今回の場合は「足継ぎ」を貼る側です。
その反対側を「前小口(まえこぐち)」と呼びます。
上の面は「天小口(てんこぐち)」、下の面は「地小口(ちこぐち)」という名前で呼ばれます。

今回は「背側」「小口側」と呼びます。
足継ぎをして貼り合わせた束が「中身(なかみ)」と呼ばれるものになります。

最初の工程は、その「中身」作りからです。

今回は、わかりやすいように先生にセルフ動画をご用意していただきました。
先生の製本講座では新しい試みで、参加者からはわかりやすいので講座中ずっと流し続けておいて欲しいという声もありました。
 
 

このブログでは製本作業の流れだけを、以下手順に沿って簡単に説明していきます。

(1) 絵本に仕立てる12枚の絵を、同寸に裁ち揃えます。
 
 

(2) 右開きにするか左開きにするか、絵の順番を決めて、頁番号をふって編集します。
カッターを使う作業では、皆さん力が入ります。
 
 

(3) 絵を実際にめくる順番になるよう重ね、そのうえで二つの山に分けます。
「1枚目(5P-6P=8P-7P)」 
「2枚目(3P-4P=10P-9P)」
「3枚目(1P-2P=12P-11P)」という形で、足継ぎする順番に頁が揃います。
手が止まり、考えたり質問する時間が多くなる工程です。
 
 

(4) 足継ぎをします。
足継ぎとは、綴じ代のない絵の背側に和紙を貼りつけ、綴じ代をつくるための製本技術です。
足継ぎ用和紙を、絵の裏面で挟み込むような形で貼りつけます。
 
 


(5) 天と地で、はみ出している足継ぎ用和紙を断ち落とし、三枚目の足継ぎ用和紙の外側に、「裏打ち寒冷紗」を貼りつけます。
 

慎重な作業が続きます。
 
ここまでが前半、皆さん時間を 忘れて作業に没頭されていました。

(6) 糸綴じをします。中央で糸綴じすることで、見開きを平らにすることができます。
 

目打ちを使って内側から穴をあけます。
 
先生の作った拡大サンプルがわかりやすい!
     

製本用の針と麻糸を使って綴じていきます。
 
ようやく絵本らしくなってきました。

(7) 中身の背と表紙を貼り合わせます。最後の工程です。
 

表紙で中身を包み込む形になります。
 
中身の大きさに合わせて切った用紙の中央に糊を引きます。
     

中身の背の寒冷紗部分にも糊を引きます。
 

(8) 中身の小口に合わせて、表紙の小口を切り揃え、各頁の小口の裏面同士を貼り合わせて1枚ずつに仕立てます。
足継ぎされた3枚が12頁に仕立てられているはずです。
 

皆さん、自作の出来栄えに満足そうなご様子
 
一つ折り中綴じ本の完成です!

今回教えていただいた手製本の技術を使うと、中身が絵本に限らず、お気に入りの複製絵画や絵葉書、写真、イラストなどを、きれいに製本された形で保存できるようになります。

折る・断つ・貼るという基本的な製本技術をはじめとして、機械では作れない世界で唯一の手作りの柔らかさと優しさにあふれた本を、自分の手で作り上げたという達成感も得られたのではないでしょうか。
手作業だけに1回ではなかなか身につかない技術ですが、自分で何度も作ってみることで、上達していくものだと先生もおっしゃっています。

さらに、手製本で仕立てられたものは中身をそのままにして表紙だけを替えることが容易なのです。
自分好みの表装を施した自分だけの本を作ることが出来て、もし表紙が傷んだ場合でも、そのまま捨ててしまうのではなく、修理して長く使うことが出来るということにも気づかされました。
 

先生の作品
 

今回の講座を通して、手仕事の良さや面白さが実感できたのではないでしょうか。

まだまだ奥の深い手製本の世界ですが、たまきさんサロンではこれからも永澤先生に素敵な技術をご教授お願いしたいと考えています。

永澤先生、ありがとうございました。
ご参加いただいた皆さま、長い時間お疲れさまでした。
 

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